行政書士霜田眞法務事務所 笑顔経営塾 第62回:暗黙知を活かそう~知識創造へ

第62回:暗黙知を活かそう~知識創造へ



目次

概要

第62回は「暗黙知を活かそう~知識創造へ」です。

塾長、学ぶ、笑みの3人の会話が展開する形でお伝えします。
塾長:笑顔経営塾の主宰者。「あなたの笑顔がみたい」がモットー。
笑み:塾長にいろいろな相談ごとを持ってくる。
学ぶ:塾長の補佐をしているが、勉強中。

第62回は「暗黙知を活かそう~知識創造へ」です。

暗黙知は最近あまり聴かない言葉ですね。

一時流行ったような気もします。

今では、将棋の藤井聡太七冠はAIで勉強してると思いますけど、昔から日本では、「俺の背中を見て覚えろ」だの、「カバン待ち」だの、師匠から弟子へ伝授するときは、言葉を使わない方法でしたし、それでうまく行っていました。言葉では伝えきれない暗黙知というのは、どこの世界でもやはりあるんでしょうね。

暗黙知というのは、言葉の響きが古いし、暗いので、あまり使われないですけど、「コツ」とか「ツボ」とか、あるいは「姿」とか「思い」とか、何か伝えるべきものがあるというのはわかります。師匠から弟子に教えるのは、知識を伝授するというよりは、人を育てるというイメージだったんでしょうね。

そこのところもう少し詳しくお話していただけますか?

暗黙知とは

暗黙知は「経験や勘、直感などに基づく知識」「簡単に言語化できない知識」です。日本企業の文化にもなっています。また、言語以外で伝わるメッセージとして説明されることもあります。「名人のコツ」のような技能的な意味合いと、言葉にしにくい「感情のようなもの」「思い」「世界観」を意味することがあります。
通常で考えれば、「製造現場の作業のコツ」「売上ナンバーワンの営業マンの売り方」「経営者の創業時の思い」のようなものが、企業には存在していると思われます。それが、「個人の暗黙知」であり、「組織共有の形式知」になっていないことが問題になるわけです。
自転車の乗り方を覚えるときは、何度も繰り返して転んで体がバランスを覚えます。この体が覚えたことが暗黙知です。自転車に乗るのと、製造現場の作業とを比べると、複雑さが違います。ある程度、形式知で学習してから、経験で覚える繰り返しになります。企業は競争ですから、その組織が持つ形式知や暗黙知で、業績に差がでます。

名人は頑固でとっつきにくいかもしれませんが、会社ではそれはちょっと困りますね。

言葉にするのも、伝えるのも難しいような気がしてきました。

なぜ暗黙知を形式知に変える必要があるのか                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

ではなぜ、暗黙知を形式知にして共有する必要があるのでしょうか?あらゆる知識は暗黙知として生まれます。未来は人間の思い、夢から生まれます。そこに暗黙知の強みがあります。しかし、そのままでは共有できません。
暗黙知の欠点を中心に以下にまとめてみました。
1.特定の社員個人が専有することで、他に広がらない。
2.他と共有しないので、融合もしないし相乗効果も生まれない。
3.会社も個人も成長する機会を失う
4.特定の社員が個別の複数に教えると、時間損失もあるし、バラツキも出る。
5.間違いがあっても気づかない
6.時代遅れになっても気づかない
7.企業の文化のようなものがあっても、暗黙知のままでは伝承できない

せっかくある暗黙知も、意識的に取り出さないと、埋もれてしまう感じですね。

今のSNSの時代には合わないですね。

暗黙知を変えるSECIモデル                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

暗黙知を形式知で共有する方法として、野中郁次郎先生はSECIモデルを提唱しました。
1.S(Socialization共同化)
言葉ではなく何かしらの体験や経験によって、暗黙知を他人に移転させます。ベテラン社員や職人の仕事を見て覚える、一緒にやってみます。
2.E(Externalization表出化)
暗黙知を、言葉や図解などに表して他人と共有します。業務のマニュアル化など。
3.C(Combination連結化)
表出された知識を他の知識と組み合わせることで、新たな知を創出します。他人の知識やノウハウを取り入れることで、新たな方法で業務の効率化を図ったり、新たなアイデアを発見することなどです。
4.I(Internalization内面化)
新たに創出された形式知を、各個人で習得するために反復練習等を行うことでまた自分のものとし、形式知から個人の暗黙知へとまた変化する段階です。
操作を繰り返し行うことで、マニュアルを見なくても操作でき、その人なりの工夫(暗黙知)が生まれます。

このSECIモデルの絵は見たことがあります。

形式知にしたあと、さらに発展させてから、また暗黙知にしていくのも面白いですね。

日本ロシュのSSTプロジェクト

日本ロシュのSSTプロジェクトについて、山本藤光さんの著書で紹介されています。
1.営業力強化のための「SST(Super Skill Transfer)プロジェクト」
2.内容は、優れた「暗黙知」を持つMR(医薬情報担当者)24名の「名人芸移植プロジェクト」
3.IT時代の効率重視のマニュアル的「形式知」が流行している中で、逆らうような「暗黙知」、つまり世界観や信念、熟練、勘といった個人的・主観的な体験に根ざす「知」に着目した。
4.「SSTプロジェクト」が注目したのは「能」。能の大家は、指導書やマニュアルを読むのではなく、見よう見まねで、身体で覚えたからこそ優雅に舞える。

形式知にも欠点があるということですね。

暗黙知の中にこそ、企業の強みがありそうですね。

暗黙知を形式知に変える方法

暗黙知を形式知に変える方法は以下のとおりです。
1.組織として取り組むビジョンを掲げる。。。どんな知を得たいのか
個人を巻き込んで協力してもらいながら組織全体で取り組みます。
2.暗黙知を洗い出す
 組織の中で、個人が専有する暗黙知を洗い出します。
3.共有して創造する場を設けます
 「マニュアルにしたから読んでおきなさい」という進め方ではありません。
 SECIモデルにいうところの4つのプロセスを進める場を設けます。
4.フォローと発展継続、繰り返し
 共有することで、「暗黙知から形式知へ、形式知から暗黙知へ」を繰り返して行きます。この課程で新しい知識が創造されていきます。

みんなを巻き込まないといけませんね。

繰り返して行って発展させるところがミソですね。

知識創造経営へ

野中郁次郎先生はこのSECIモデルをベースにして、知識創造企業というものを提唱しました。このなかで、組織的知識創造が日本企業の国際競争力の最も重要な源泉である、と提唱しています。知識創造の5つの要件が上げられています。
 1.組織の意図:どのような知識を創造するかという知識ビジョンを創り具体化する。
 2.自律性:メンバーに自由な行動を認めることで、動機づけることが容易になる。
 3.ゆらぎと創造的なカオス:刺激することで、メンバーが「断続的に」疑問を持って考え直す機会を与える。「内省」を制度化しなければならない。
 4.冗長性:意図的に社員に重複共有させることで、「侵入することによる学習」をもたらし、暗黙知の共有を促進する。
 5.最小有効多様性:複雑多様な環境に対応するためには、組織は多様性をその内部に持たなければならない。
 
暗黙知と形式知の相互作用を組織として実践することにより、知識を創造する企業となることができます。自分たちだけでは、気づかない「強み」を発見すること、あるいは、さらに強化することができるかもしれません。

繰り返しながら大きくなるスパイラルですね。

個人から組織へと大きくなるのが理想的ですね。

暗黙知の変換が成功するためには~実践とDXも

暗黙知への変換が成功するために注意するのは以下のようになります。
1.単なるマニュアル作りにしないこと
 形式知への変換は大事ですが、その段階で暗黙知に含まれる大事な要素が漏れないように注意しましょう。
2.実践で学ぶこと
 暗黙知は机上で学ぶことには向いていません。なるべく実践で学ぶようにしましょう。
3.学びながら拡大すること
 なるべく、他者との相互作用も含めて、学びが発展するようにしましょう。
4.組織として体制をもって推進すること
 組織が戦略として推進し、サポートするのが効果的です。
5.ツールを採り入れること
 ナレッジマネジメントツールもあります。DXなどの新しいツールも検討する価値があります。

ツール導入で終わらないようにしないとね。

やはり、企業変革という高い目標を見失わないようにしたいですね。

中小企業と暗黙知

中小企業では、少ない人数で成果を出しています。どうしても、個人に頼ることが多くなります。うまくいっていればいいのですが、会社の業績が行き詰まったときが見直すチャンスです。個人の暗黙知を形式知として組織で共有することで、組織全体のレベルがあがります。また、改善する機会も増えます。個人の知の融合も起きます。人材育成や技能伝承のためにも、暗黙知の変革に取り組むことが効果的です。

中小企業のほうが、新しい取り組みをしやすいかもしれませんね。

高齢化で技能伝承が必要ですからねえ。

笑顔経営塾では、楽しい雰囲気の会社は業績も向上すると考えています。暗黙知の共有の課程で、個人同士のふれあいが生まれます。お互いに協力しあう関係で雰囲気もよくなります。暗黙知の活用は、組織のレベルを着実に上げることができます。

社内でお互いに教えあう関係もいいですね。

個人を巻き込むんですが、その巻き込まれた個人も組織に貢献できる満足感がありますね。

まとめ

暗黙知には、世界観や信念、熟練、勘といった個人的・主観的な体験に根ざす「知」が含まれています。未来は暗黙知である人間の思い、夢から生まれます。暗黙知の中にこそ、企業の思い、強みがあります。SECIモデルをベースにして「個人の暗黙知」を「組織共有の形式知」にする課程で相互作用が生まれ、知識を創造する企業となることができます。

今日も難しい課題でしたが、「暗黙知を活かす研修」「知識創造経営への転換」などでお手伝いさせていただくのが、笑顔の経営には一番大事かもしれませんね。

これから取り上げる内容も含めて、皆さんからご意見ご要望をいただければありがたいですね。次回も楽しみにしています。

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(了)