行政書士霜田眞法務事務所 笑顔経営塾 第18回:失敗から学んでいますか?~安全防災編

第18回:失敗から学んでいますか?~安全防災編



概要

第18回は「失敗から学んでいますか~安全防災編」です。

塾長、学ぶ、笑みの3人の会話が展開する形でお伝えします。
塾長:笑顔経営塾の主宰者。「あなたの笑顔がみたい」がモットー。
笑み:塾長にいろいろな相談ごとを持ってくる。
学ぶ:塾長の補佐をしているが、勉強中。

第18回は失敗から学んでいますか~安全防災編です。

前回は「失敗から学ぶ」の原因の分類や原因分析からの対策のお話でした。今回は、企業で起こる事故や災害についてですね。

安全衛生や防災というと、すきま業務のような印象ですね。事故が起きてからあわてて対策をとるというのがパターンでしょうか?

労災事故の防止は企業の大きな課題ですが、ここでも失敗から学ぶという対応方法が効果的です。

事故を起す人と起さない人がいるために、個人の責任になってしまって、「今後は一層注意すること」で終わるケースが多いと思います。

製造現場があるところはともかく、オフィスしかないところはあまり興味がないところかもしれません。健康診断やストレスチェック、今ではコロナのワクチン接種などが課題でしょうか。

そうですね、現場とオフィスとでは対応方法も違ってきますが、オフィスでも事故はあるということを認識してただきたいねすね。また、共通していえるのは、安全衛生・防災でも、「失敗から学ぶ」ことから予防対策をとらないと、ムダな失敗を繰り返すことになります。

事故が起きてしまうと、その対応に時間をとられるわけですから、予防をしっかり対象するわけですね。

そこのところもう少し詳しく教えていただけますか?

労災の分類

前回お話した、ハインリッヒの法則で、ヒヤリ・ハットが出てきます。ヒヤリ・ハットとは、重大な災害や事故に直結する一歩手前の出来事です。思いがけない事に「ヒヤリ」としたり、「ハッ」としたりすることが由来で、事故や災害につながる要因を特定し対策する貴重な機会であり、リスクマネジメントの観点からも重要です。厚生労働省のホームページには労災のヒヤリ・ハット事例が登録されています。
イラスト入りでわかりやすくなっています。分類だけご紹介します。
◆「墜落、転落」
人が樹木、建築物、足場、機械、乗物、はしご、階段、斜面等から落ちることをいう。乗っていた場所がくずれ、動揺して墜落した場合、砂ビン等による蟻地獄の場合を含む。車両系機械などとともに転落した場合を含む。
◆「転倒」
人がほぼ同一平面上でころぶ場合をいい、つまずきまたはすべりにより倒れた場合をいう。車両系機械などとともに転倒した場合を含む
◆「激突」
墜落、転落および転倒を除き、人が主体となって静止物または動いている物にあたった場合をいい、つり荷、機械の部分等に人からぶつかった場合、飛び降りた場合等をいう。車両系機械などとともに激突した場合を含む。
◆「飛来、落下」
飛んでくる物、落ちてくる物等が主体となって人にあたった場合をいう。研削といしの破片、切断片、切削粉等の飛来、その他自分が持っていた物を足の上に落とした場合を含む。
◆「崩壊、倒壊」
堆積した物(はい等も含む)、足場、建築物等がくずれ落ちまたは倒壊して人にあたった場合をいう。
立てかけてあった物が倒れた場合、落盤、なだれ、地すべり等の場合を含む。
◆「激突され 」
飛来落下、崩壊、倒壊を除き、物が主体となって人にあたった場合をいう。つり荷、動いている機械の部分などがあたった場合を含む。交通事故は除く。
◆「はさまれ、巻き込まれ」
物にはさまれる状態および巻き込まれる状態でつぶされ、ねじられる等をいう。プレスの金型、鍛造機のハンマ等による挫滅創等はここに分類する。ひかれる場合を含む。
◆「切れ、こすれ」
こすられる場合、こすられる状態で切られた場合等をいう。刃物による切れ、工具取扱中の物体による切れ、こすれ等を含む。
◆「踏み抜き」
くぎ、金属片等を踏み抜いた場合をいう。床、スレート等を踏み抜いたものを含む。踏み抜いて墜落した場合は墜落に分類する。
◆「おぼれ」
水中に墜落しておぼれた場合を含む。
◆「高温・低温の物との接触」
高温または低温の物との接触をいう。高温または低温の環境下にばく露された場合を含む。
◆「有害物等との接触」
放射線による被ばく、有害光線による障害、CO中毒、酸素欠乏症ならびに高気圧、低気圧等有害環境下にばく露された場合を含む。
◆「感電」
帯電体にふれ、または放電により人が衝撃を受けた場合をいう。
◆「爆発」
圧力の急激な発生または開放の結果として、爆音をともなう膨張等が起こる場合をいう。破裂を除く。水蒸気爆発を含む。容器、装置等の内部で爆発した場合は、容器、装置等が破裂した場合であってもここに分類する。
◆「破裂」
容器、または装置が物理的な圧力によって破裂した場合をいう。圧かいを含む。研削といしの破裂等機械的な破裂は飛来落下に分類する。
◆「交通事故」
(道路)交通事故のうち道路交通法適用の場合をいう。
(その他)交通事故のうち、船舶、航空機および公共輸送用の列車、電車等による事故をいう。公共輸送用の列車、電車等を除き、事業場構内における交通事故はそれぞれ該当項目に分類する。
◆「動作の反動、無理な動作」
上記に分類されない場合であって、重い物を持ち上げて腰をぎっくりさせたというように身体の動き、不自然な姿勢、動作の反動などが起因して、すじをちがえる、くじく、ぎっくり腰およびこれに類似した状態になる場合をいう。バランスを失って墜落、重い物をもちすぎて転倒等の場合は無理な動作等が関係したものであっても、墜落、転倒に分類する。
◆「その他」
上記のいずれにも分類されない傷の化膿、破傷風等をいう。
◆「分類不能」
分類する判断資料に欠け、分類困難な場合をいう

ぎっくり腰は労災の分類にあるんですね。何もない、平らな廊下でつまずいて転んで骨折した話をきいたことがあります。年齢とともに、労災のリスクは高まっているので注意喚起は必要ですね。

分類は、統計などで必要ですね、職場単位で、起こりやすい分類というのもあるといいですね。

現場でのKYT

KYT(危険予知訓練)は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法で,厚労省のホームページでも紹介されています。ローマ字のKYTは、危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTをとったものです。
危険予知訓練に中央労働災害防止協会の手法である問題解決4ラウンド法と結びつけ、さらに、指差し呼称を組み合わせた「KYT4ラウンド法」としたものが標準とされています。

KYTは聴いたことがあります。空気を読まないKYとは全く違いますね。

現場ごとにその現場で起こる危険を予知するわけですね。。

4つの工程で、1現状把握、2本質追究、3対策樹立、4目標設定という段階を踏みます。
1.現状把握:イラストを見ながら潜んでいる危険を予測しあいます。
2.本質追究:予測した危険の中から重要なものを〇で特定します。さらにみんなの合意でしぼりこみ、◎印とアンダーラインをつけ「危険のポイント」とし、指差し唱和で確認します。
3.対策樹立:具体的な対策案を出し合います。
4.目標設定:※「重点実施項目」とし、それを実践するための「チーム行動目標」を設定し、指差し唱和で確認します。

唱和するところが、「昭和」な気がしますが、現場では一体感をつくる必要がありますから、重要ですね。声に出していうと、自分の脳にも摺りこまれそうですね。

でも、イラストで具体的に危険な作業を見せて考えさせるのは、わかりやすいですね。イラストをどれだけ実際の現場に近いものでやるかが鍵になりそうです。

オフィスでの安全衛生

オフィスでは、ぎっくり腰という話がありましたが、従来から「腰痛」が代表的ですね。給湯室にはやけどもあります。蛍光灯の取替えで椅子に乗って転倒するのも多いです。サンダル履きで、角に足をぶつけて小指骨折もありますね。在宅勤務特有の危険もあるかもしれません。
それそれ、体操、熱湯注意張り紙、脚立の利用、サンダル履き禁止など、さまざまに対策を講じていく必要があります。

雨の日にビルの廊下で滑って転んだという話も聞きます。通勤途上災害もいれると油断できませんね。

腰痛対策でオフィスで体操というのも、ちょっと恥ずかしいですが、重要な気がしてきました。

安全衛生法の関係で、企業の規模によって、「安全衛生会議」を定期的に開催している企業も多いと思います。そこで、今まで述べたように「失敗から学ぶ」考え方をとりいれてほしいのです。
事故が起きたら、「不注意」で方付けるのではなく、なぜ「不注意」だったのか、例えば、朝出がけに夫婦ゲンカをして、集中力がなかったなどの事情までわかってくるといいですね。あるいは、なぜ、決められたルートでない通路を歩いたのか、近道をしたい急ぐ事情があったのか、など、「真因」にたどりつくまで、原因究明しましょう。「事故報告書」のフォーマットに工夫することで、原因究明は深まると思います。

原因分析のフォーマットは鍵になりますね。

「真因」までいきつくと、対策も変わってきますよね。

防災の大切さ

「安全衛生会議」では、防災についても一緒に対策していくと効果的です。今までは、火災や地震のときの避難が中心でしたが、これだけ自然災害が増えてくると、家族との連絡方法、在宅時の安否確認、帰宅ルートの確認など、普段からやるべきことが多いですね。防災については、事例をもとにして考えることも大切です。神戸の阪神淡路大震災をもとにした「クロスロード」というゲームがあります。避難所にペットをつれていくべきか、避難所で自分たちだけ持ち込んだ食料を食べるべきか、などいくつかの質問に考えて答えるゲームです。その職場にあった質問を増やしたりして工夫すると一層効果的です。一度やったことがありますが、警備員チームには好評でした。

防災「失敗から学ぶ」としても、何度も経験できるわけじゃあないですから、ゲームもいいかもしれませんね。

避難所も普段からいかないと、雰囲気がわかりませんよね。ヴァーチャル体験の考え方はいいですね。

まとめ

安全衛生・防災でも「失敗から学ぶ」ことは大切です。現場には、KYTという手法が効果的です。オフィスでも、事故・災害の類型から対策が必要です。事故が起こった際は「真因」にたどりつく手法をとりましょう。「事故報告書」には、原因究明と対策実施を必須にして、フォローしましょう。防災については、事例をもとにして考えることも大切です。ヴァーチャル体験の考え方をとりれましょう。

今日も難しい課題でしたが、「安全衛生・防災の仕組み作り」「KYTの実施・定着」などでお手伝いさせていただくのが一番大事かもしれませんね。

これから取り上げる内容も含めて、皆さんからご意見ご要望をいただければありがたいですね。次回も楽しみにしています。

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今回は、「失敗から学んでいますか~安全防災編」について、ご理解いただけたと思います。

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(了)