行政書士霜田眞法務事務所 笑顔経営塾 第13回:長所を見ていますか?~徂徠訓

第13回:長所を見ていますか?~徂徠訓



概要

第13回は「長所を見ていますか」です。

塾長、学ぶ、笑みの3人の会話が展開する形でお伝えします。
塾長:笑顔経営塾の主宰者。「あなたの笑顔がみたい」がモットー。
笑み:塾長にいろいろな相談ごとを持ってくる。
学ぶ:塾長の補佐をしているが、勉強中。

第13回は長所を見ていますかです。

部下を持っている人?あるいは、夫婦関係のお悩みですか?私なんか、最初に気づくの相手の短所ですから。

自分の長所は何かをわからなかったり、あるいは長所なんか「ない」と思ってる人もいるかもしれません。

今日は、私が若い頃にであった、「荻生徂徠訓」をご紹介したいと思います。荻生徂徠は徳川吉宗に仕えた江戸時代の儒学者で、赤穂浪士の事件で、「義士の切腹」を唱えた人で有名です。落語の「徂徠豆腐」に出てきますね。私は、「徂徠訓」に出会い、メモしたものを名刺入れに入れてときどき読み返していました。

難しそうな方ですね。切腹と長所はピンときませんね。

「法を曲げずに、法に情けを注いだ」みたいなことを言っていたような・・・

部下を持ち始めたときに、この言葉に出会って、「自分は全くできていない」ことだとおもったので心に残りました。いろいろと癖のある部下を持つたびに思い起こしていました。次のとおりです。
徂徠訓
一、人の長所を初めより知らんと求むべからず。
  人を用いて、初めて、長所の現はるるものなり。
ニ、人はその長所のみを取らば、即ち可なり。短所を知るを要せず。
三、己が好みに合う者のみを用ふるなかれ。
四、小過を咎める用なし。ただ事を大切になさば可なり。
五、用ふる上は、その事を十分にゆだぬべし。
六、上にある者、下の者と才智をあらそふべからず。
七、人材は必ず一癖あるものなり。器材なるが故なり。癖を捨つべからず。
八、かくして、上手に人を用ふれば事に適し、時に応ずる人物、必ずこれにあり。
九、小事を気にせず、流れる雲のごとし。

いいことを言っているらしいのですが、極論みたいなところが伝わりにくいかも。

漫才のミルクボーイではありませんが、そこのところもう少し詳しく教えていただけますか?

一、長所は用いて現れる

一つずつ、塾長が思ったこと私見ですがお話します。
まず、
一、人の長所を初めより知らんと求むべからず。人を用いて、初めて、長所の現はるるものなり。
これは、仕事をさせててみると、最初は気づかなかったいいところが見えてくるといってますね。是非、みつけてほしいです。これは夫婦関係、親子関係、友達関係でもあり得るお話ですね。私は、部下に関しては第三者の評判を聞いて、「意外といい所がある」と見直すことにしていました。

短期な人にはムリそうですね。家族や友人でも、相手の短所ばかりが気になってくるとイライラすることが多いですね。

僕に不満を持つのはやめてね。いいところもあるでしょ?

二、短所は見なくてもいい

ニ、人はその長所のみを取らば、即ち可なり。短所を知るを要せず。
これは、短所を知る必要はないと言っていますが、私は若い頃は納得いかなかったです。でも、今は「長所」と「短所」が表裏のこともあるからかなあと思っています。長所を「褒めて伸ばす」のがいいですね。

短所を直そうとすると、長所もなくなるということかあ。家族関係や友達関係は是非そうしてもらいたいけど、会社の部下はそうはいかないですよね。

賛否はありますね。でもやたら仕事ができる人がいると、自分より仕事ができない周りに不満ばかりもってしまって雰囲気を悪くする例はありますね。

三、自分の好みはだめ

三、己が好みに合う者のみを用ふるなかれ。
ある程度の権力があれば、自分の好みの部下を集めていいチームを作りたくなります。でも、これは確かに危ういですね。みんなが同じ発想だと、リスクを見落としたりしやすいと思います。反対する人や好みに合わない意見を言う人を無視したりするのもよくないです。例えば、自分に何でも反対する人を味方にするぐらいの度量のある人がリーダーにふさわしいかも知れません。(ポイントは相手を認める「承認」)

人事や組織のあり方としては、大事なチェックポイントですね。

社長のまわりをイエスマンで固めた会社は危ういですね。

四、小過より大事

四、小過を咎める用なし。ただ事を大切になさば可なり。
小過(小さな過ち)はとがめないというのは、会社では難しいことですが、人を育てる上では、その事を慎重に実施すれば、いいと。例を挙げれば、レポートを書くときにちょっとした誤字脱字や言い回しを直すことに夢中にならないで、全体の内容がきちんと書かれているか、レポートを読んだ人に伝わるかという目で見る必要があります。ミスを指摘して萎縮させてもいけません。ミスを起さないような仕組みを作る事も大事です。私は、部下のミスしやすい所は「指摘」よりは「把握」しようと思っていました。

レポートを何回も書き直させる上司がいますねえ。子育てでも、「歯を磨け」「風呂にはいれ」とか、生活ルールはしょうがないですが、「元気がなさそう」とかそういうことをよく見ておかないといけませんね。

仕事の目的や仕事の楽しさなんかをしっかりと把握してくれれば、小過は目をつぶれるかもしれませんね。

五、委ねる

五、用ふる上は、その事を十分にゆだぬべし。
これは、ついつい細かい指示をしてしまうことへの警鐘ですね。細かい指示をもらいたいという人もいますが、相手のやる気が出なくなりますし、創意工夫もなくなります。部下のほうが現場に近い知識があるかもしれません。ある程度は、信頼して任せたほうが育てるうええではいいです。

「任せるよ」という時に「丸投げしたな」と思わせないほうがいいですよね。「責任はとるから」と付け足してもらいたいです。

「エンパワーメント」が流行りましたよね。「理想的な姿や経営戦略の意図が社員に共有されたうえで第一線の社員に判断と行動の権限をゆだねることを勧める。」というものでした。徂徠は江戸時代に気づいたんですね。驚きです。

六、争わない

六、上にある者、下の者と才智をあらそふべからず。
部下をライバルや敵であるかのように張り合うのはやめましょう。どうしても「上司風を吹かせたい」という気持ちはわかりますが、よくありません。どんな案を出しても上司がそれより「いい案」を出して決定するというのは、部下のやる気をなくさせます。私もそういう癖がありました。。。反省して、部下を尊重して認めるような余裕がほしいです。

できる上司にありがちですね。でも部下たちはすぐ気づきますからね。SMAPの世界に一つだけの花「どうしてこうも比べたがる」を思いだしてほしいです。

「負けす嫌い」は「諸刃の剣」ですね。

七、癖を捨てない

七、人材は必ず一癖あるものなり。器材なるが故なり。癖を捨つべからず。
癖というのは、「特徴」でしょうか。実は、これも若い頃は私はよくわからなかったところでした。癖は直したいですよね。「なくて七癖あって四十八癖」といいますが、だからといって直さないほうがいいというものではないです。ただ、普通に考えれば、その人の存在価値というか、他人と違うところというのは、組織の中では大事な気もします。環境の変化に対応していく進化論的にも、現在の環境には適していなくても、これから起こる環境の変化に適している人は貴重になります。同類の人の集まりよりは、個性ある人の集まりが強い気もします。有能な人こそ癖があります。多様性の時代です。

就活でも、自分の強みや特徴を必死に作った気がします。

若い時は「面白い奴だと思われたい」というのもありましたねえ。日本のような、同調圧力がある組織では、ちょっと気をつけないといけないかもしれません。

八、上手に人を用いる

八、かくして、上手に人を用ふれば事に適し、時に応ずる人物、必ずこれにあり。
単なるまとめの文章のようですが、言いたいことのヒントがある気がします。それは、「事に適し、時に応ずる」というところです。まとめると適応力になります。「常に変化に対応する組織と人材育成」という見方が込められてると思います。このように人をうまく生かせば、大事な時に才能を発揮して、変化にも対応し、これにこたえる人が出てくる。といっています。

なかなか、深いですね。人材育成の基本方針にしたいですね。

変化への対応も大事ですね。

九、流れる雲のごとし

九、小事を気にせず、流れる雲のごとし。
ここでも小事を気にしてはいけないと言っていますね。流れる雲は、大きな自然や悠久の時の流れを感じさせます。志を大きく持ち、小事を捨てて大きな目標を共有したいものです。

そのためには、長所を見るということですね。中小企業では、限られた人材で成果を出す必要があります。長所を見つけだして委ねて育てるというのは大事な視点ですね。

猿岩石を思いだしました。それはともかく、江戸時代の教訓とは思えないですね。多様性の現代にこそ使えると思いました。

まとめ

社員の少ない中小企業では社員を切り捨てない「人材育成」が大事です。組織が社員一人ひとりを尊重し、その資質や能力をうまく生かすことによって組織的能力が自律的に高まります。徂徠訓では、長所を見いだして、小過をとがめずに、十分に委ねることで自主性や創意工夫も生まれます。モチベーションをあげる効果もあります。すべての上司に読んでほしいです。

今日も難しい課題でしたが、「長所を伸ばす人材育成」「上司のあり方」などでお手伝いさせていただくのが一番大事かもしれませんね。

これから取り上げる内容も含めて、皆さんからご意見ご要望をいただければありがたいですね。次回も楽しみにしています。

まずはお問い合わせください

今回は、「長所を見ていますか」について、ご理解いただけたと思います。

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(了)