目次
概要
第42回は「いい監査していますか~経営支援と統制のために」です。
塾長、学ぶ、笑みの3人の会話が展開する形でお伝えします。
塾長:笑顔経営塾の主宰者。「あなたの笑顔がみたい」がモットー。
笑み:塾長にいろいろな相談ごとを持ってくる。
学ぶ:塾長の補佐をしているが、勉強中。
第42回は「いい監査していますか~経営支援と統制のために」です。
監査役というと名前だけで何もしないイメージがありますけど。
中小企業では監査役もおかない会社もありますよね。
監査というと、いろんな監査があるので誤解されやすいですね。背景にある法律や制度を意識しないと混乱します。ここでは、会社法の制度の中の、監査についてお話したいと思います。
中小企業ではISO9001品質保証の認証などをとることがあり、その中でISO制度に沿って運用がなされているかどうかを、監査する「内部監査人」がいますが、これとは全く異なります。よく似たような作業をしますけど、目的が違います。
中小企業でも不正はありうると考えると、監査的な機能は誰かがしないといけない気もしますね。ISOの認証とは違うとは思いますけど。
そこのところもう少し詳しくお話していただけますか?
三様監査とは
日本の会社では、監査が3種類あり、三様監査と言われます。
1.外部監査
会社の外部者による会社外部者(投資家)のための監査
主に会計監査人・監査法人が行います。
2.監査役監査
会社内部者及び外部者による会社外部者のための監査
株主総会で任命される監査役、監査委員が行ないます。
社外監査役もあります。
3.内部監査
会社内部者または外部者により会社内部者のための監査
会社内の組織として「監査部」などが行ないます。
「監査部」としては、内部監査を実施する部門と監査役監査を支援する部門(例:監査役室)に分かれることがありますが、指揮命令系統は別として実施ではお互いの協力体制が必要となります。
中小企業では、三様監査を全くおかないことも可能です。
ずいぶん複雑ですね。不祥事がおこらないように体制もしっかりしなければなりませんね。
上場していると株主に対する説明責任もありますからね。上場していなくても、金融機関に対しては、しっかりと内部統制していることを見せる必要がありますね。
会計監査人
会計監査人は以下のような制度です。
1.設置義務と設置会社
大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)及び委員会設置会社では、会計監査人の設置が義務付けられています(会社法327条5項、328条)。
また、大会社以外の株式会社においても、定款に定めることにより、会計監査人を設置することができます(法326条2項)。
2.職務内容
株式会社の計算書類およびその付属明細書、臨時計算書類、連結計算書類の監査を行い、会計監査報告の作成職務を行う、株式会社の外部機関です(会社396条1項)。
3.資格
公認会計士又は監査法人であること(法337条1項)
4.選任解任
株主総会の普通決議で選任・解任ができます(法329条1項、339条1項)。
大企業の制度ですね。よく倒産したときに責任問題になりますよね。
多くの問題のない事例はニュースにならないで、不祥事と倒産だけがニュースになるので、会計監査人も大変ですね。
監査役
監査役は以下のような制度です。
1.設置義務と設置会社
監査役は、原則として会社の定款の定めによって任意に設置される機関です。
ただし、大会社かつ公開会社であれば、監査役は3人以上必要で、社外監査役が監査役の数の半数以上必要となり(335条3項)、かつ常勤の監査役が最低1人必要であり(390条2項2号、同3項)、監査役会が設置されます(328条1項)。
2.職務内容
取締役の職務の執行を監査することであり、業務監査と会計監査とがあります(381条)(非大会社かつ非公開会社では会計監査に限定することができます)(389条1項)。
3.資格
取締役と同様の欠格事由(335条1項、331条1項)があるほか、監査役はその会社または子会社の取締役・支配人その他の使用人、子会社の執行役を兼務することはできません。(335条2項)。
4.選任解任
株主総会の普通決議で選任されます。(329条1項、341条)
株主総会の特別決議によって解任されます(339条1項、309条2項7号)。
5.監査委員
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社では取締役会内に設置される監査等委員会・監査委員会及び会計監査人による監査を前提としているので、監査役を設置することができません(327条4項)。
昔と違って、監査役は設置しなくてもいい制度になってしまいましたね。
会社の機関設計が、かなり自由化されて複雑になってしまいましたね。
内部監査
内部監査は以下のような制度です。
1.設置義務と設置会社
会社に任意で設置する組織です。内部統制には必要となります。
2006年に改正された会社法で、大企業では内部統制整備が義務化され、内部監査を設置することが必須となりました。また、2015年の改正では、企業集団および監査体制の強化と、運用状況の開示が求められるようになりました。金融商品取引法第24条では、有価証券報告書の提出企業は、内部統制報告書を提出することも明記しています。
2.職務内容
任意です。社長や取締役が決めることができます。
主には、不正の予防及び発見
経営目的達成の支援
業務効率化の促進
3.資格
任意ですが、公認資格を取得すると信頼感がでます。
内部監査人の国際資格である「CIA(Certified Internal Auditor-公認内部監査人)」は、資格認定試験に合格し、実務経験等の要件を満たした者に授与される称号です。
「内部監査士」は、日本内部監査協会の内部監査士認定講習会を修了した方に与えられる称号です。
4.選任解任
社内組織の任命になります。
内部監査となると、会社内では、嫌われる組織になってる気がします。
たしかに嫌われないようにしなくてはね。ただ、常任の組織で設置するとそれなりに抑制効果がありますね。やりかた次第ですが、不正を防ぐ意味では、とても有効となりますよね。
適法性監査と妥当性監査
監査役は株主総会に先立ち、監査報告書を提出するのが大きな任務です。
監査報告書の文章には、監査した内容が書かれます。
監査役の監査の範囲は以下のように見解が分かれます。
1.適法性監査
取締役の職務執行が法令・定款に準拠して実施されているか否かを監査します。
2.妥当性監査
取締役の職務執行が経営方針等に準拠して合理的であるか否かを監査します。
消極的妥当性監査:経済的・効率的であるか否か
積極的妥当性監査:効果的・目的的であるか否か
3.監査役の監査の範囲に関する見解
① 適法性監査に限定する
② 適法性監査を主とするが、必要な場合には妥当性監査に及ぶ
③ 妥当性監査にも及ぶ
監査報告書の雛形に書かれている内容が監査役の職務になるわけですね。
たしかに、妥当性までは、取締役としては監査役から口出ししてほしくないでしょうね。
内部統制
金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部統制は以下のように定義されています。
内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。
会社法施行規則100条で、「大会社かつ取締役会設置会社」である場合には、内部統制の整備が義務づけられています。また、金融商品取引法24条の4の4第1項により、「上場会社」は毎年、内閣総理大臣に対して「内部統制報告書」の提出が義務づけられれています。
業務記述書、フローチャート、リスク・コントロール・マトリックス(RCM)の3つを合わせて「内部統制の3点セット」と言います。
内部統制は、義務づけられている会社があるから、やり方も決まってる感じですね。
リスクマネジメントに似てますね。
内部監査の監査手順
内部監査における手順は以下のとおりです。
1.予備調査
実地監査を効率よく行うための準備として行ないます。
書面調査または机上調査です。監査予備調書を作成します。
2.本格監査
実地監査に始まり、監査調書の作成で終わります。
実地監査後に、反面調査、証拠吟味、意見形成、調書作成を行ないます。
この段階では、異常事態の検出、証拠資料の入手、合理的監査意見の形成が成否を左右します。
3.意見表明
監査先に対する監査意見通知、経営者に対する監査報告書提出です。
監査先が監査意見を実現したことを確認する回答書、及びフォローアップを付加します。
不正や改善点の発見も難しいですが、改善結果までフォローするんですね。
PDCAの典型的なものですね。ISOだと規格に適合するかどうかのチェックリストを使いますよね。内部監査でも業務毎にあると便利ですね。
内部監査の監査技術
内部監査が実効性あるためには、以下の大切な監査技術があります。
1.突合(つきあわせ)照合
証憑突合、帳簿突合、計算突合
2.閲覧
定款、総会議事録、取締役会議事録、監査報告書、稟議書、証拠書類、帳簿、税務申告書、社内規定、ガイドライン、マニュアル等
3.通査(走査)
一連の会計記録を通覧して、異常、例外、疑問等を探索
個別監査技術には次のようなものがあります。
1.実査
現金、預金証書、有価証券、棚卸資産、などを直接見て確認します。
2.立会
会社が行なう棚卸しなどに立ち会うものです。
3.視察
事務所、工場、建設現場、倉庫、保管先などに出向いて確認します。
いわゆるエビデンスの確認ですね。これが、実態との唯一の接点ですね。
異常の検出がウデのみせどころですね。
中小企業の経営支援のための監査
内部監査はアシュアランス(監査・保証)とコンサルティング(診断・助言)の2つの機能を持たせることができます。中小企業では有効な改善策を打てないことが多いので、内部監査のコンサルティング機能が注目されます。
すなわち、中小企業では属人的になりやすいので、牽制機能としての内部監査が機能しますが、改善へのアドバイスという意味でも内部監査の役割が期待されます。
あらかじめ、経営者の方と「経営目標達成」「リスクマネジメントの有効性」「コンプライアンスの有効性」などで重点ポイントを話し合って、内部監査に活かすといいですね。
不正防止と経営支援ですね。
守りだけでなく攻めですね。形ばかりの監査報告書を作るよりは、実態を見て改善を提案してもらえればいいですよね。
笑顔経営塾では、楽しい雰囲気の会社は業績も向上すると考えています。内部監査は、経営者の指示で会社内部を調査することになりますので、前向きな態度で、友好的に行ない、経営に貢献する目的で行なうと効果的です。通常の組織の指揮命令系統で限界に達している場合には、第三者視点がヒントになることがあります。
欠点探しにならないようにしたいですね。
セカンドオピニオンにもなりますね。
まとめ
監査には三様監査があります。特に内部監査は、既存の組織とは別の角度から会社の内部を適格に把握することができます。不正防止のための内部統制、リスクマネジメント、コンプライアンスの視点と、経営目標達成のための視点をうまく取り入れることで、会社の実態を反映した経営支援の攻めの効果が期待されます。
今日も難しい課題でしたが、「監査体制の構築」「内部監査の実施」などでお手伝いさせていただくのが、笑顔の経営には一番大事かもしれませんね。
これから取り上げる内容も含めて、皆さんからご意見ご要望をいただければありがたいですね。次回も楽しみにしています。
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(了)