行政書士霜田眞法務事務所 笑顔経営塾 第74回:インボイスを検討しよう~適格請求書制度に備えるために

第74回:インボイスを検討しよう~適格請求書制度に備えるために



目次

概要

第74回は「インボイスを検討しよう~適格請求書制度に備えるために」です。

塾長、学ぶ、笑みの3人の会話が展開する形でお伝えします。
塾長:笑顔経営塾の主宰者。「あなたの笑顔がみたい」がモットー。
笑み:塾長にいろいろな相談ごとを持ってくる。
学ぶ:塾長の補佐をしているが、勉強中。

第74回は「インボイスを検討しよう~適格請求書制度に備えるために」です。

10月からいよいよ始まりますね。

声優さんなどが廃業しなければと言っている制度ですね。

国が消費税をしっかりと回収したいと思った制度改革なんですが、評判が悪いので、次次と緩和措置を作ってわかりにくくなっていますね。

どういう制度なのかをよく理解しないと方針もきまりませんよね。

そこのところもう少し詳しくお話していただけますか?

「インボイス適格請求書制度」とは

2023年10月1日から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されます。
インボイス制度が始まると、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者(適格請求書発行事業者)のみが発行を許される「適格請求書(いわゆるインボイス)」の保存が仕入税額控除の要件となります。
消費税は負担するのが消費者です。それを商品代金とともに受け取った事業者が、消費税を国に納付します。このとき、商品を仕入れるときに仕入れ先に支払った消費税をマイナスしてから納付するのが消費税額控除の制度です。仕入れ先が国に納める消費税と商品を売った事業者が納める消費税の合計が、消費者の負担した消費税と合致するという理屈です。この控除ができないと、消費税額を二重に負担することになります。

仕入税額控除の問題だったんですね。

取引先がからむので複雑なんですね。

消費税の見直しが必要な理由                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

ところが消費税は、消費者が負担した消費税の全額が国に収まるわけではありません。免税事業者であれば消費税を預かっても消費税の申告・納税が免除されているため、預かった消費税がそのまま利益(益税)とされ得るのです。そしてこれが長年問題にされてきました。この益税問題の解消を図るため、免税の対象となる年間課税売上高を3,000万円以下から1,000万円以下に引き下げるなど、政府は免税の特例措置の条件を年々厳しくしてきました。
そこで今回のインボイス制度ができたわけです。

日本は中小企業が多いですからね。

今回の制度改革は思い切った改革なわけですね。

なぜ中小企業が困るのか?

そこで、今まで免税事業者だった中小企業は以下の点で悩むことになります。
1.適格事業者にならないと取引を停止されるおそれ
 仕入れる側は仕入れ控除をしたいので、適格事業者に限定したいと思う可能性があります。取引を停止されるおそれがあります。業務委託契約の声優とテレビ局などの事業者の関係ですね。その仕入れる側がインボイスを気にしていない場合はかまいません。そこで、取引先に問合せてみることをおすすめします。
 もちろん、自分たちが仕入れ先ではなく、個人消費者に商品を売る立場の場合は、インボイスを発行する必要もなく、売上規模によっては今までどおり免税事業者を続けることも可能でしょうね。
2.適格事業者になると、経理事務は繁雑になるし、消費税を納めるため利益が大幅に減少するおそれ
 適格事業者は売上にかかわらず免税制度は利用できないので、消費税を納める必要があります。従って、会計帳簿にしっかりと記帳したほうがよさそうです。仕訳の区分が今までは、10%、8%。混在の3通りだったというのですが、これからは、それが適格か非適格かで2倍の場合分けになり、経過措置の対象かどうかが加わるので、最大20通りになるそうです。
 また、赤字経営が多い中小企業では、消費税も結構負担になりますね。

どちらを選んでも大変そうですね。

よく検討しないといけないですね。

第一の選択肢:適格請求書発行事業者になる必要はあるのか?

そこで、第一の選択肢として、適格請求書発行事業者になる必要はあるのか?という問題です。
一般論としてはお客様の形態で変わるといわれています。
◇お客さまは法人のみ(建設業 (一人親方) や製造業など)
 適格にならないと、値下げや取引の停止を伝えられる可能性があります。
 お客様と相談することをおすすめします。
◇お客さまは法人・個人どちらも(飲食店や個人タクシーなど)
 個別に検討が必要です。
◇お客さまは個人のみ(美容院や学習塾など)
 非適格でも今まで通りの関係性が続くと思われます。

業種で対応が変わってくるわけですね。

個別にはよく検討したほうがよさそうですね。

適格請求書発行事業者への登録手続き

インボイスを発行するためには、所轄税務署長に登録申請を行います。(e-Tax可。郵送の送付先は、各国税局のインボイス登録センター)。
審査を経て、登録された場合、「登録通知書」(登録番号記載)が送付されてきます。令和5年10月1日から登録を受けようとする事業者は、令和5年9月30日(同日は土曜日ですが、10月2日(月)に延長されません。)までに登録申請を行う必要があります(令和5年9月30日までに提出した場合は、10月1日までに登録通知が届かなかった場合でも、同日登録とみなされます。)。
制度開始日後でも、登録希望日(提出日から15日以降の日)を記載することで、その登録希望日から登録を受けることができます。

3月までというのは変更になったんですね。

経過措置ですね。

適格事業者の売手の業務

適格事業者の売手の業務は以下のようになります。
1.要件を満たしたインボイス(適格請求書)の交付
登録番号と税率ごとの消費税額及び適用税率を記載
2.インボイスの端数処理の見直し
税率ごとに合計した対価の額に税率を乗じて消費税額を算出(行毎ではない)
3.複数書類のインボイス対応(領収書、納品書等)
月末締め請求書1枚に対し複数の納品書があると端数が異なる可能性がありますので、どれを原本とするか取引先と決めておく必要があります。
4.インボイスの写しの保存(約7年)
写しの作成義務があります。1月からは紙出力保存NGとなり、電子のまま保存します。

売手と買手とで業務が違うわけですね。

電子帳簿保存法もからみますね。

適格事業者の買手の業務

適格事業者の買手の業務は以下のようになります。
1.インボイス(適格請求書)の受領と適格事業者か確認
受領したインボイスの追記や修正はNGです。
2.受領したインボイスの保存
公共交通機関の運賃や自動販売機での購買などの一部例外を除き金額の多寡なく約7年間保存します。
3.経過措置を考慮した記帳
経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存が必要
4.取引先への確認と管理
適格事業者かどうかと請求書のレイアウトなどを確認する必要があります。

負担軽減経過措置もおさえる必要がありますね。

インボイスの記載事項も理解していないといけませんね。

第二に選択肢:簡易課税にすべきか

第二の選択肢が簡易課税にすべきかどうかです。
売上5000万以下の場合、個別計算でなく簡易税率で控除する制度が利用できます。この場合は、仕入れ先が適格か非適格かは気にする必要はありません。業種ごとの税率が決まってますので、実態と比べて納付税額が少なくなるほうを選ぶことになります。
<一般課税>当期の支払消費税 =売上(収入)に掛かる受取消費税 – 仕入れ等(支出)に掛かる支払消費税
<簡易課税>当期の支払消費税 =売上(収入)に掛かる受取消費税 – 売上(収入)に掛かる受取消費税 × みなし仕入率
第1種(卸売業)90%
第2種(小売業等)80%
第3種(製造業等)70%
第4種(その他事業)60%
第5種(サービス業)50%
第6種(不動産業)40%
事業者が簡易課税制度の適用を受けるためには、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
ただし、免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録を受けた日から課税事業者となる場合は、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した消費税簡易課税制度選択届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用することができます。

ここでも個別の事業者が判断することが必要ですね。

たしかに便利な制度ですが、これもかえって複雑にしますね。

負担軽減措置ほか

負担軽減措置は次のようなものがあります。
1.経過措置
令和5年9月30日まで:免税事業者からの課税仕入全額控除可能
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで:同80%控除可能
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで:同50%控除可能
令和11年10月1日から:同控除不可
2.2割軽減措置
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になられた方は、業種に関わらず売上税額の一律2割を納付可能です。
期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。
一般課税と簡易課税のいずれを選択している場合でも、適用可能です。簡易課税制度の適用を受けるための届出書を提出していたとしても、申告の際に2割特例を適用することが可能です。

負担軽減措置もせっかくつくっていれたので利用したほうがいいですね。

消費税の対象となる売上と経費がありますから、要注意ですね。

中小企業とインボイス制度

中小企業では、売上高も少なく、免税事業者が多いと思われます。まさに、今回の制度改革のターゲットになっています。適格事業者となるのか、簡易税率を利用するのかなど、制度の内容をよくご理解いただいてご判断いただきたいと思います。

困難な課題かもしれませんが、乗り越えていただきたいですね。

経過措置の間に、企業の体力を充実させる方策が必要かもしれませんね。

笑顔経営塾では、楽しい雰囲気の会社は業績も向上すると考えています。消費者からいただいた消費税は、国へ納めるのが基本です。これを機に企業体力を強化して、制度改革に対応していただきたいと思います。

経理処理も含めて、しっかりと準備して対応する必要がありそうですね。

経過措置があるから、条件がうまくあてはまると「様子見」という選択もありそうですけどね。

まとめ

2023年10月1日からインボイス制度が導入され、適格事業者のみが発行できる「適格請求書(いわゆるインボイス)」の保存が仕入税額控除の要件となります。まず、「適格事業者になるのか」の是非は、一般論としてお客様が法人のみの場合は、是となります。お取引先と確認しましょう。適格事業者となった場合は、売手、買手のすべき業務(請求書の発行、経理処理など)に対応します。そのうえで、簡易課税とするか否かを判断します。負担軽減となる経過措置も含めて、制度の内容をよくご理解いただいてご判断いただきたいと思います。

今日も難しい課題でしたが、税務相談はできませんので、「インボイス制度の解説」「国税庁のQ&Aのご案内」などでお手伝いさせていただくのが、笑顔の経営には一番大事かもしれませんね。

これから取り上げる内容も含めて、皆さんからご意見ご要望をいただければありがたいですね。次回も楽しみにしています。

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(了)