目次
概要
第72回は「人事制度を改革しよう~魅力ある会社になるために」です。
塾長、学ぶ、笑みの3人の会話が展開する形でお伝えします。
塾長:笑顔経営塾の主宰者。「あなたの笑顔がみたい」がモットー。
笑み:塾長にいろいろな相談ごとを持ってくる。
学ぶ:塾長の補佐をしているが、勉強中。
第72回は「人事制度を改革しよう~魅力ある会社になるために」です。
今、ジョブ型が流行ってますよね。
転職の時代ですからねえ。
人事制度の難しいところは、世の中でよくいわれる制度をとりいれてもあまりうまくいかにないことが多いところにあります。
大企業と中小企業ではまったく議論がかみあわないこともありますよね。
そこのところもう少し詳しくお話していただけますか?
「人事制度」とは
日本生産性本部では、「人事制度とは、人事管理を「思いつき」や「個人の好み」、「場当たり的」に行うのではなく、「経営目的の実現・従業員の所属価値の向上」を図るために、計画的かつ、合目的な理念・価値基準にもとづいて、全体として一貫性のある(整合した)人事管理を行うための基準や運営の仕組みのこと」と紹介しています。
内容としては、「等級制度」「評価制度」「賃金制度(処遇制度)」などの3つに分けて説明されることが多いですが、これに「育成・教育制度」を加えることもあります。
そうなんですね。たしかに、等級制度、評価制度、賃金制度が制度としてきちんとあるのが、「人事制度」なんですね。それに教育が加わると。
人事制度は、昇給昇格、人事異動と連動しますから複雑ですね。大企業になると、さらに細分化されて、安全衛生の部門、労働組合との交渉を行う部門、従業員不祥事の対応を行う部門、福利厚生の部門、などがいわゆる人事部門の中にはりますよね。
人事制度が必要な理由
人事制度が必要な理由は以下のようになります。
1.会社の目標を達成するための評価との連動
会社の目標を達成するためには、社員一人一人が目標達成のために行してもらう必要があります。この努力と評価や処遇が連動していないと、努力しようと思いません。
2.社員のモチベーション
会社の目標達成のための行動が評価や処遇と連想することは、会社のためでもあり、社員のモチベーションのためでもあります。社員は自分の居場所があると感じることができます。
3.公平性
以上のような理由も、公平性が必要です。公平な人事制度だからこそ、努力が報われると感じることができます。
4.採用と定着
しっかしした公平性のある人事制度がない会社に就職したいと思う人はいないでしょう。入社したあとに、人事制度が公平でないと知ったら離職してしまいます。
5.外部への説明責任
社員に対する処遇は外部からはわかりにくいものです。しかし、日本生産性本部が定義するように、「人事管理を「思いつき」や「個人の好み」、「場当たり的」に行う」会社は信頼できません。社長の私物になってしまいます。透明性のある人事制度が必要です。
本来は経営陣の目標を実現するための制度ですが、私物にしてはいけないんですね。
転職の時代ですから、公平な人事制度でないと、就職はしたくないですよね。
なぜ人事制度が機能しないのか
人事制度が機能しない理由は以下のようになります。
1.大企業の制度を中小企業に導入
組織の規模や、人事制度にかけられる経営資源を考えると、大企業の制度を中小企業に導入するのは危険です。
2.運用体制を考えないで導入
評価制度の運用は、各部門の公平性・客観性を保つための調整が必要となり、その運用に時間と労力がかかります。
3.企業の状態に合わない制度を導入
会社が違えば組織も職種も異なります。しかも、成長期にあるのか成熟期にあるのかによっては、ふさわしい人事制度も異なります。
4.そもそも人事制度を持とうとしていない
そもそも人事は社長が一括管理というような中小企業もあります。会社が成長するためには、しっかりした制度が必要ですが、そういう認識を持たないと機能する人事制度とはなりません。
その企業にふさわしい制度を導入するのが第一ですね。
そして運用ですね。
これからの人事制度の方向性
人事制度に歴史的な変遷は以下のとおりです。
1.年功主義
年功序列の時代です。年齢や勤続年数が重視されます。
2.能力主義
年功序列のデメリットを補うために能力を重視する制度が導入されました。
3.成果主義
さらに短期的な成果が求められる状況で欧米型の成果主義が導入されました。成果主義と併せて目標管理が導入されましたが、目標管理は難易度が高く形骸化しました。成果主義で格差と不公平感が生まれたうえ、従業員のストレスが高まることで、メンタルヘルスでの悪影響につながりました。
4.職務主義または役割主義
社員が実際に担っている職務や役割(ジョブ)によって賃金や等級を決定する仕組みです。「仕事主義=職務・役割主義」の人事制度、いわゆる「ジョブ型」人事制度は、欧米では当たり前のように導入されていますが、人手不足の日本で人材獲得を目的として、急速に広まりつつあります。また「在宅勤務・テレワーク」との相性も良く、感心を持つ企業が増えています。
メンバーシップ型からジョブ型になると、就職=就社だった時代が変わるかもしれませんね。
ジョブ型でも社員に過度なストレスを与えないといいですね。
人的資本経営の開示制度
内閣官房から人的資本可視化指針が公表されています。
背景には投資家が、人材戦略に関する経営者からの説明を期待していることがあります。人的資本可視化指針は、経営戦略と人的資本投資や人材戦略の関係性を描いた上で、そのストーリーに沿って具体的な事項を開示することが望ましいとしています。
また、国際規格ISO30414は、ステークホルダーに対する人的資本に関する報告のための指針として発表されました。11項目あります。
1.コンプライアンスと倫理 2.コスト 3.ダイバーシティ 4.リーダーシップ 5.組織文化 6.健康,安全 7.生産性 8.採用・異動・離職 9.スキルと能力 10.後継者計画 11.労働力
上場企業はもう必須ですね。
人的資本経営をするうえで取り組む基準になりますね。
トレンドの人事制度
最近トレンドの人事制度のしくみは以下のとおりです。
行動を重視するのと、評価の時間を短くする、ランクで評価しないで一人ずつ丁寧に評価するのが潮流ですね。
1.バリュー評価
企業が求める行動規範に沿った行動=バリュー基準ができたかどうかを評価します。
2.360°評価
直属の上長だけでなく、同僚や部下なども評価を行う制度です。
3.ノーレイティング
社員にABCなどのランクをつけないかわりに、リアルタイムで目標設定を実施し、都度評価をおこないます。
4.リアルタイムフィードバック
読んで字のごとく、リアルタイムにフィードバックをおこなう手法です。
5.ピアボーナス
ピア(=仲間)同士で評価しあい、ボーナス(=報酬)を贈りあう制度です。ポイントでカウントし、ポイントを商品、サービス、お金などに変えます。
第44回の1on1もそうですね。
成果主義、目標管理の悪いところを修正する動きですね。
シニア対策
2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの雇用が企業の努力義務となりました。大企業を中心に70歳までの雇用延長を制度化する動きが出てきており、多くの企業で高年齢者雇用の推進が急務となっています。
改正前は65歳で3つの確保措置でしたが、改正後は70歳で5つの確保措置となりました。
①70歳までの定年引上げ
②70歳までの継続雇用制度の導入
③定年廃止
④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的にa.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入
シニアといっても、コストがかかるわけで、若手とのあつれきの原因とならないように活躍してもらいたいものです。そのためには、適切な報酬体系・公私の両立・経験を活かす仕事がシニアの希望であることを理解することです。シニアに成果主義を導入することも検討されています。
定年がどんどんのびてますね。
大企業はシニア活用ができそうですが、中小企業は大変だとおもいますね。
人事制度改革のステップ
人事制度改革のためには以下のステップが必要です。
1.経営計画として人事制度改革の方向性を決める
2.現状調査~ヒアリング~業務分析
3.評価制度づくり
4.職務と役割のレベル分け
5.評価項目と重みづけ
6.制度設計と運用体制整備
7.説明会
8.運用開始
労働組合があれば説明が必要ですね。
現状調査が一番大事かもしれませんね。
人事制度改革を成功させるためには
人事制度改革が成功するためのポイントは以下のとおりです。
1.その組織にふさわしい制度であること
企業規模や創業からの年数などからふさわしい制度が決まります。
2.経営者が真剣に取り組むこと
制度を導入するのが目的ではなく、会社の業績が向上し、魅力ある会社となることが目標です。そのためには、経営者の本気度が重要です。
3.運用をしっかりすること
制度の成否は運用次第です。運用しながら、湧き出てくる問題点を解決していく必要もあります。
ここでも経営者次第ですね。
どんないい制度でも運用が悪いとだめですし、少し問題があってもしっかり運用することでカバーできるんでしょうね。
中小企業と人事制度
中小企業では、人事評価制度があるのは4割未満というデータもあります。人事評価に対して公平感や納得感を得づらく感じる現状があり、生産性低下だけでなく、離職率も高まります。人手不足と離職率の高さに悩む中小企業こそ人事評価制度の整備が必要不可欠なのです。優秀な人材に長く勤めてもらえれば助かりますし、採用費用もバカになりませんよね。また、創業期から成長期、発展期、成熟期にあわせてふさわしい人事制度があります。創業メンバーから人員を増やしていく時期に制度をしっかり設計することが望ましいですね。
生活残業もあったりするから、人件費の分析は必須ですね。
中小企業の発展にあわせた導入ですね。
笑顔経営塾では、楽しい雰囲気の会社は業績も向上すると考えています。良い人事制度を導入すれば、社員のモチベーションもあがりますし、ストレスもありません。生産性があがれば、業績も向上します。経営者の指揮のもと、社員が前向きに仕事に取り組める人事制度が望ましいでうすね。
いい制度といい運用ですね。
成果主義の反省をいかしたいですね。
まとめ
人事制度とは、経営目的実現のために、計画的かつ一貫性のある人事管理を行う仕組みです。歴史的には「年功主義→能力主義→成果主義→役割主義=ジョブ型」と変遷し、現在ジョブ型が広まりつつあります。バリュー評価などのしくみで、行動重視、評価時間短縮、ランクでなく一人ずつ評価が潮流です。人事制度改革によって、会社の目標を達成するための行動を評価し、処遇と連動させることで、社員のモチベーションが向上します。公平でオープンな制度とすることで、魅力ある会社となり、採用と定着にも効果があります。
今日も難しい課題でしたが、「人事評価制度の導入」「人事制度設計」などでお手伝いさせていただくのが、笑顔の経営には一番大事かもしれませんね。
これから取り上げる内容も含めて、皆さんからご意見ご要望をいただければありがたいですね。次回も楽しみにしています。
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(了)